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2025/10/09
(木)
- 10月になれば朝晩は涼しく“おくんちさん”のころを実感する。きょう9日は国宝・青井阿蘇神社「おくんち祭」最大の呼び物の神幸行列▼「このたびは ぬさもとりあへず手向山 もみぢのにしき神のまにまに」―。人吉球磨の紅葉はもう少し先になりそうだが、菅家(菅原道真)の見た秋の景色に「幣」「神」と、筆者は今まさにこの時期を思い浮かべる▼このたび(度・旅)は急なことで、ささげる幣を用意することができなかった。手向山の紅葉を神の御心のままにお受け取りください―という壮大な歌で、日本の四季と言葉の美しさを再認識▼筆者は郡部で育ったので、子ども時代、おくんち祭や犬童球渓顕彰音楽祭に参加した経験がない。テレビや新聞で知ってはいたが、沿道から見る神幸行列も音楽祭の碑前祭や発表会も記者になって初めて体験した▼相良700年、保守と進取で独自の文化が根付いた人吉球磨。ただ、それを後世まで継承し続けることは容易なことではない。過疎化や少子化だけではくくれない、未曾有の災害や新型ウイルスも経験した▼令和2年7月豪雨から5年。何気ない日常の当たり前のありがたさを、にぎわいにかみ締める実りの秋。