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2026/03/16
(月)
- 先週、野焼きの取材で久しぶりに訪れた人吉市田野町。熊本と鹿児島県境の久七峠近く、標高約700メートルに位置。美晴山と呼ばれる高原(原野)が広がり、旧田野小学校の三角屋根が絵画を思わせる独自の景観をつくり出している▼阿蘇の牧野と同じく保全には春の野焼きが欠かせない。以前は、集落奥の「鵜の川」と呼ばれる原野とともに約60ヘクタールを地元住民たちが1日がかりで行っていた。しかし、人手不足から23年前には鵜の川の野焼きをやめて植林し、美晴山だけとなっていた▼その後も住民は減って現在は約50人。多くが高齢となり、今後の継続は困難として昨年、町内会は中止を決めた。しかし、旧田野小校舎を活用しウイスキー蒸溜所を開設した高橋酒造の社員、ボランティアの協力が得られ、田野共有林組合主催で実施が実現。無事に野焼きを終えた原野は、やがて緑に姿を変えていく▼立ち会った高橋酒造の高橋光宏社長は「焼酎と同じような文化。残してほしい」と願うが、共有林組合の元田宗治組合長は「いずれは難しくなる」と話す▼鵜の川と同じく山林になれば田野の魅力は失われる。来年も何らかの形で春の風物詩が続くことを願う。