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2025/09/16
(火)
- 人吉市の中心市街地に期間限定で開かれた「ひとはこ図書館」には、静かなにぎわいがあった。豪雨災害からの復興を目指す街に現れたこの場所は、通りがかる人々を温かく迎え入れる▼棚にはオーナーたちの思いを込めた本が置かれている。企画運営する市民団体「人吉に新図書館をつくる会」の有馬宏昭会長は「ここは単なる図書館ではなく、それぞれの思いを詰めた小さな宝箱が集まる空間」と語る▼子どもたちの楽しそうな笑い声が響き、若い母親たちの居場所にもなっている。個性豊かな本棚が並び、特に日本製鉄の橋本英二会長のボックスは目を引いた。人吉高校の卒業生である彼が故郷のために選んだ本は、被災地の若者の未来を応援しているかのようだった▼人と人、人と地域をつなぐ「ひとはこ図書館」。この温かい空間は10月で終わる。災害を乗り越えようとする街にとって本当に必要なのは、こうした人々のつながりと安心して過ごせる「居場所」なのだと改めて感じさせられる▼この図書館が示したように、復興とは単に建物を再建することだけではない。期間限定の図書館が教えてくれた心を癒やす「居場所」の力は、復興への道筋を示す光だ。