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2025/08/16
(土)
- 戦後80年のことしは特に平和希求への思いが募る。一方、戦争体験者は減少し大戦が単なる歴史となる危惧も。そんな中、飛び込んできた千玄室氏の訃報▼終戦記念日の8月15日目前の一昨日だった。茶道裏千家15代家元で、青年会議所を通じて人吉市と縁深く、かつては忍んでよく来訪したと漏れ聞く。縁あって歓談の際は、俳優の故・西村晃氏と海軍同期、特攻で生き残った仲との話題から温顔一変、「戦争は2度とやったらあかん」と険しい表情に▼すでに3年が経過したロシアのウクライナ侵攻で延べ30万人、ガザではイスラエルの攻撃で5万人以上が死亡したとの報道がある。背景など戦争の原因はさまざまだが、殺りくの応酬では憎悪と敵意しか生まれない。それでも戦争はやまない▼日本財団が今夏、全国の17~19歳1000人を対象に実施したアンケート調査では、7割超が先の大戦を友人や家族と話題にしないと回答。今やわが国では戦後生まれの人口が全体の9割弱を占める。戦争の記憶と並ぶ平和の継承がかすんでいる▼先の玄室氏は茶道を通じ世界で平和を願い続けた。「和敬清寂」が最も似合うのも戦争体験者ならではだったかもしれない。