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2025/06/10
(火)
- 近ごろ和歌との縁が続いた。一つは山江村歴史民俗資料館で始まった三十六歌仙の絵額展。約300年前に万江阿蘇神社に奉納された木製の絵額で16枚が現存し、中には肖像や文字が見えるものもあって、長い歳月、地域から大切にされてきたのだろうと思う▼もう一つの縁は競技かるた。小学生時代、国語の授業で和歌と出会った子どもたちが40年ほど前に人吉市にあった愛好会の扉を開き、高校生になって総合文化祭の出場につながった。練習会で読み手の声や呼吸を聞き逃すまいと集中する静けさ、先んじて札に到達できるように力を込めた背筋。無駄のない一挙一動に“本気”を感じた▼実は彼女たちと会う少し前、小学生からかるたに誘われた。「もう札を覚えていないから」と断ったが、本当は「覚えている札が少ない」が正解。1人目、2人目の天智天皇と持統天皇は繰り返し暗唱して覚えたが、以降は「枕草子」を授業で習った延長で清少納言、絶世の美女と伝わる小野小町あたりを興味で覚えた程度▼先述の高校生は得意な札が幾つかあるらしく、どれも季節の描写や音の響きが美しかった。梅雨、長雨。この縁を機に歌人百人と向き合ってみようか。