HOME>>瀬音

  • 2025/04/05 (土)
  •  JR九州と熊本県の肥薩線八代―人吉間の2033年をめどにした鉄道復旧の最終合意に、心を震わせた被災者も多いのでは。その裏では歴史や思い出が詰まった3駅の廃止を余儀なくされた▼先週、令和2年7月豪雨から4年9カ月の今も寂れたレール、流失した鉄橋、荒れ果てた駅舎など災害の激しさを物語る復旧区間を巡った▼瀬戸石駅(八代市)は跡形もなく、一帯は枕木やレールなどの資材置き場と化していた。対岸からの渡し舟をこいでいた船頭の求9454川八郎さんの歴史は瀬戸石駅と共にあった。とうの昔に引退されたが、廃駅をどう思うのだろうか▼朽ち果てたかのような海路駅(芦北町)の奥に廃校が残るのみ。球磨村神瀬地区の花見で取材した女性は列車通学のために対岸から自ら舟をこいでいた当時を懐かしんだ▼那良口駅(球磨村)では駅ノートが今も鉄道ファンと地域をつなぐ。駅の美化活動を続ける名誉駅長の林エミ子さんは「残念だが、廃止後も利活用を」と願う▼新駅が設置されれば復興のシンボルとなるだろう。時間がかかる運行再開までに地元の熱意を絶やしてはいけない。被災地の鉄道に欠かせない「心の復興」行きへ出発進行。

トップへもどる