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  • 2021/06/08 (火)
  •  郡市各所で田植えが本格化。雨季らしい例年の光景が広がるも、仕事で走り慣れた球磨川近くの田んぼは昨夏の水害の爪痕を残したまま。災害がなければ一面は緑に覆われていたと悔しさが募る▼わが国の場合、毎年の雨季があればこそ世界屈指の“水の国”を誇れる相関関係が存在する。さらには水が災害を招く一方、田植えや作物栽培など人間社会には水が欠かせない因果関係も同様。結局われわれの生活は常に、災害を含む水の出来事と深く関わっている▼この季節、水の話題ではアジサイも欠かせない。個人的には晴れ間より雨天時に雨粒をたたえて少々、頭を垂らす姿こそ最適と思う。そこにカタツムリでもいれば雨季の風物詩は間違いなしの絵づら▼ある被災宅の庭先でアジサイが発災を経て生き続け、数を減らしてもなお鮮やかな彩りを変えていない。例年並みの美しさを携えた様子に勇気を得ると語る家人が、花壇に並べた挿し木にそっと水を与えていた▼命を育む一方、時にその命や生活を根こそぎ奪う水の存在。われわれは過去、幾度の水災を経てもなお水と過ごしてきた。時間は不可逆だが、一歩前へと背中を押す感の田植えの風景だった。

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