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  • 2019/11/26 (火)
  •  球磨川を覆う霧を横目に、時には立ち込めた霧をくぐり出社の車を走らせる。前方に突如現れる道路横断の人影。用心、安全の季節だ▼人吉と霧は切り離せない。自称“東洋一”だった加久藤峠のループ橋の冠には負けるが、人吉の霧には“日本一”の折り紙が付いた。約50年前の年間霧発生日数は143日。人吉測候所の職員が研究会で盆地特有の放射霧として発表し注目された▼「将来、高速道路が出来ても晩秋から初冬は視界が悪く“高速”の使命を果たせず、数㌔の渋滞発生の恐れ」と懸念されたものだ。それから約20年後、高速道路は開通したが、霧の発生は減り、それによる交通渋滞も聞かない▼それでも“日本一”の片鱗はある。人吉への転入者は「曇りかと思っていたら晴れ」と不思議がったものだ。同測候所はずっと前に無人化され、発生回数も確認できない▼「かはちどり鳴けば見おろす球磨川の 瀬の音たかし霧のそこより」。市民に知られた中嶋哀浪の人吉城跡の歌碑は自然石の碑面が薄汚れ雑草が巻いていた。市制10周年の建立から66年。やむを得ぬのか。母校の小学校校歌に「霧だ霧だよきょうもまた…」とあったのをことしも思い出す。

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