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2025/12/22
(月)
- ことし12月上旬、取材ノートに記された「宮原寧音」の四文字に数秒間、時が止まった。2016年に公開された映画「スクール・オブ・ナーシング」で主人公の幼少期を演じた少女が今、人吉高校ソフトボール部の主将として目の前に立っている▼2014年11月のクランクインから翌年の完成まで、映画には多くの市民が出演し、地域を熱く盛り上げた。当時の本紙連載を振り返れば、宮原さんら出演者たちのはじけるような笑顔が今も紙面からあふれ出す▼2015年8月、人吉市カルチャーパレスでの特別上映会。満員御礼の客席が見守る中、彼女がステージで監督らに花束を渡した光景を、きのうのことのように思い出した▼あれから10年。「大きくなって」という問い掛けに、「覚えていますよ」とはにかむ笑顔。あのくりっとした瞳は当時のままだが、歩んだ道は豪雨やコロナ禍という逆境の連続だったはず▼この映画には豪被災前の中川原公園など懐かしい風景が刻まれているが、彼女はその記憶を糧に、心から競技を楽しみ、主将として仲間を導くたくましいリーダーへと成長を遂げていた▼点と点がつながる瞬間の喜びは、記者冥利に尽きる。