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2025/09/17
(水)
- ことしは戦後80年の節目として各地で先の大戦を考える催しが開かれた。その中で興味深かったのが、錦町の人吉海軍航空基地資料館で先月末まで開催された特別企画展「赤とんぼ Willow(柳)と呼ばれた飛行機」▼「赤とんぼ」は、同資料館に展示されている実物大模型の九三式中間練習機のこと。二枚羽の複葉機でオレンジ色だったことに由来。パイロットの養成に使われたが、大戦末期に特攻機として使われた詳細を知ることができた▼ゼロ戦などの戦闘機と違って速度は遅く、それに重い爆弾を搭載すれば離陸も難しい。通常の戦法では勝ち目はないが、敵に発見されにくい夜間に海面すれすれで飛行する手法を取り、昭和20年7月には沖縄の米海軍駆逐艦を撃沈する戦果を上げている▼機体に羽布や木が使われていたことでレーダーに探知されにくかった点もあるが、練習機までも特攻に投入せざるを得ないほど追い詰められた当時の日本の状況が分かり、展示された本物の発動機や車輪は、戦争の証人として静かに史実を伝えていた▼今後も日本だけでなく世界へ向けた“平和の発信基地”として、全国の資料館と連携した企画展を望みたい。