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  • 2025/05/15 (木)
  •  この季節、窓を開けて吹き込む風には野草や花々の香り付き。ついでに鳥のさえずりが音の彩りを添えて実に気持ちが良い。春の短い郡市には貴重な薫風かもしれない▼薫風とは南、または南西方向からの穏やかな湿風を示す。特に青葉や若葉などがあふれる今ごろは、森林を通した木々の香りを含むため心地良く感じられそうだ。元は春の風を指したが、爽やかな初夏を感覚的に捉えた呼び方へと変化し5月、夏の季語ともなった▼宮中の雅とは別、人間味あふれた随筆集の枕草子。作者の清少納言は無論、平安以降の日本文学作において引用された漢詩文のほとんどが唐代の詩人、白居易(白楽天)の著作集「白氏文集」による。この白居易こそ「薫風自南至 吹我池上林」などと薫風を使った▼コメ価格急騰などの物価高に、増大一途の社会保障費、いつまでも続く政治とカネの問題など若い世代ほど将来不安は増すばかり。間接民主主義のわが国の場合、また社会のグローバル化も手伝い、現状の責任を政治家だけに転嫁するわけにもいくまい。ちなみに先述の白氏文集には政治への切諫が多く収められる▼真夏日の到来も目前だが、今しか味わえない薫風をぜひ。

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