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  • 2024/05/11 (土)
  •  「読書バリアフリー」について聞く機会があった。誰もが文字・活字文化の恩恵を受けられる社会。点字や音声、手話、文字の大きさや色を変えたり、スイッチでページをめくるデジタルの本など、“読み方”は多様化している▼記者になったころ、人吉球磨には「心のバリアフリー・アートフェスティバル」というイベントがあり、学校では総合的な学習の時間の導入に伴って身近な地域のバリアフリー探検が始まった▼当時から個人的に「新聞のバリアフリー」が目標。難しい漢字や熟語は振り仮名や他の表現への書き換えを意識する一方、カタカナ語を全て純和風に置き換えるとかえって分かりづらくなるジレンマとも闘う▼昨年、芥川賞を受賞した市川沙央さんの「ハンチバック」。主人公は先天性の難病を抱えており、分厚い紙の本への言及がある。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること…。無意識の“読書文化”にはっとする▼振り仮名や言い換えは「見える」前提に立ち、新聞は紙をめくる動作も伴う。活字の並びや文章の構成、リズム感。多様な“読み方”に心を寄せ得る想像力や表現力を磨きたいと改めて。

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