HOME>>瀬音

  • 2023/01/27 (金)
  •  先週、あさぎり町で行われた国営川辺川総合土地改良事業の完工式。華やかな祝賀ムードはなく、地元首長や議員の祝辞からは「残念」の言葉が多く聞かれ、事業着手から約40年にわたる紆余曲折を象徴していた▼事業は、川辺川ダムを水源とし球磨北部の農地に農業用水を安定的に供給する計画で昭和58年度に着手。その後、農業情勢の変化、変更計画手続きを巡る裁判、新たな計画策定に向けた協議、事業休止、行政連絡会議を経て変更計画が確定した▼事業の柱だった農業用用排水事業は廃止され、受益面積は3590ヘクタールから198ヘクタールへ大幅に縮小。農地造成地には、各団地ごとに地下水を水源に水の手当がなされたが、自然流下の農業用水と違い、揚水ポンプの電気代が必要となる▼今後気になるのは維持管理面だけでなく受益農家の高齢化。「昭和」「平成」「令和」を経て、ダムからの水を待っていた働き盛りの青壮年は70歳以上の高齢者となった。山を切り開いて造成した農地は獣害にも遭いやすい。農地を守る後継者がいればいいが▼川辺川ダム建設予定地では、時を経て流水型ダム建設計画が進む。利水事業の教訓は生かされるのだろうか。

トップへもどる