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  • 2022/08/26 (金)
  •  ロシアがウクライナに侵攻して半年が過ぎた。戦禍は長期化しそうで、遠く離れた日本にも経済面で影響を与えている。これ以上尊い命が失われないよう一日も早い停戦を願うばかり▼この状況を受け、人吉市の郷土史家、前田一洋さんが、高齢者の絵本シリーズの6冊目となる「ぎばった ぎばった―」を上梓した。球磨弁で“頑張る”の意味だが、77年前、日本の国民もウクライナと同じように苦しい時代があったことを知ってほしいと、終戦記念日前の出版を急いだ▼絵本と銘打ってあるように球磨弁と上中万五郎さんのカラー挿絵はユーモラスに見えるが、召集令状、疎開児童、農地解放など戦時下と戦後復興の世相を分かりやすく解説。高齢者が本を手に当時を思い出し、子や孫に語り聞かせる次世代への継承を願っている▼本紙でも以前、終戦記念日前後に戦地を知る体験者の証言を掲載していたが、年を追うごとに他界され、証言を得ること自体難しくなった。記憶の風化が進む中、戦争の悲惨さと平和の尊さをいかに伝えていくか…▼連日、テレビで伝えられるウクライナの戦況が、その教えとなっている現実を皮肉に感じてしまう。

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