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  • 2022/01/29 (土)
  •  ふるさとの風景で想起するシーンは人それぞれ。何気に見慣れた町の景色には総じて目印や象徴となる建物が含まれる。しかし一昨夏の水害がそれらを奪っていった▼市内にあった老舗和菓子屋もその一つ。笑顔を絶やさない高齢社長と奥さん、そして元気のよいスタッフと過ごした時間は相当。甘党も手伝い好物だった“上用”“みそ”まんじゅうはもう食せない。今や空き地となった現地前を通過するたび、楽しかった日々を思い出す▼解体絡みでは、人吉市内のある被災者は道路の拡幅計画が障害の一つなのか、「家財に限らず思い出も奪われる感じでもう住めない」と明言。都市部への転居を検討中と聞き残念だが再建は強要できない。気持ちも理解できる▼大戦で焦土と化した東京や大阪などの大都市圏ほか、“阪神淡路”に“東日本”の大震災被災地では地域差はあれ一定の復興を遂げている。郡市だっていずれは街並みも整うだろう。私たちは発災前の見慣れた景色と町の温もりなど、自らが生まれ育った証を後世に残す責任も同時に負う▼ふるさと人吉球磨地域の魅力や特長は何か。被災した故に熟考すべき理由は明確だ。ここから未来への希望が生まれる。

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