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2021/07/27
(火)
- 「多様性と調和」を掲げる東京五輪が開幕し数日が過ぎた。いまだ収束の兆しが見えないコロナ禍での開催。多くの国民の不安と期待が入り交じった幕開けとなった▼無観客の開会式で日本選手団の旗手を任されたのは、西アフリカ・ベナン出身の父と日本人の母を持つバスケットボール男子の八村塁選手。注目された聖火の最終点火者は、ハイチ出身の父と日本人の母を持ち幼少期から米国で暮らす女子テニスの大坂なおみ選手だった▼まさに多様性を象徴するかのような2人のスター選手。特に、大坂選手は優勝した昨夏の全米オープンで白人警官らに殺害された黒人被害者の名前が入ったマスクを連日着用。人種差別について抗議したのは記憶に新しい▼人種や国境を超え、世界中の人々が喜びと感動を分かち合うのが五輪の醍醐味。この“晴れ舞台”のためにさまざまな困難を乗り越え、鍛え上げてきた各国アスリートたちの好勝負を今後も期待したい▼人種、性別、国籍、障害の有無など、現在の日本が多様性を認め合う社会を実現しているかというと、ほど遠いのが現状。57年ぶりに自国開催となった夏季五輪が、差別や偏見をなくす契機となることを切に願う。