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2019/06/18
(火)
- 小欄で多用する言葉のひとつが「報恩」。個人的には「謝徳」を加えて成語と思うが、現代社会ではその希薄ぶりが著しい。悲しいことだ▼ここ十年来、仏道とのご縁で仏語に触れる機会が増えた。仏教では恩には4種あり、そのひとつが“衆生(師友)の恩”。日常的に誰もが関わる価値は揺るぎなく、謝念の蓄積が社会環境の向上に大きく寄与する。大切なこと▼人吉市で行われていた天草市出身の美人画家、鶴田一郎さんの個展がきょう終了した。鶴田さんで思い出す高野寺(人吉市)の味岡戒孝住職。実は7年前、地域のためにと当時の田中信孝市長へ斡旋。お城まつりの原画ポスターが始まったのだ▼地域発展の影にはたいてい、名も知れない功労者がいる。そんな彼らに対して行政マンはもちろん、その恩恵に預かる私たちにこそ報恩と謝徳の意識は欠かせない。内密とすべき話の披歴。関係者には恐縮だが、それも忘恩への焦りから。理解のほどを▼最近、政治や経済に限らず社会でも忘恩の徒が増えてきた。周囲を一望すれば誰かがいよう。常識と良識への非常識な蔑視が招く、不幸の原因がここにある▼報恩と謝徳を胸に、良識への探求が尽きぬ日々。