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2026/07/07
(火)
- 令和2年7月豪雨から6年が過ぎた。被災からの復興へ歩みを進める街並みの陰で、「あの味が忘れられない」と惜しまれつつ、ひっそりと姿を消したふるさとの“食遺産”がある▼「ここのアップルパイが大好きだったな」。JR人吉駅前にあった老舗パン屋「フランソア」を思い出す。幼いころ、父親に連れられ、子ども心にパンを入れる袋のデザインもおしゃれに映った。店を営む老夫婦の穏やかな日常の風景は豪雨の濁流によって奪われてしまった▼「長まんじゅう」といえば、誰もがその名を挙げた「いわみ商店」。午前中には売り切れる手土産の定番として親しまれてきたが、大正元(1912)年創業の老舗は、水害から2年を迎えた7月4日にのれんを下ろした▼紺屋町で118年にわたり、地域に寄り添い続けた和菓子の「濱田屋」も甚大な被害を受けた。「みそまんじゅう」をはじめ、風土を映した銘菓の数々は、地域の記憶そのものだった▼災害は建物だけでなく、地域が育んだ文化や日常までも押し流していく。きょう7日は「七夕」。失われた温かな“口福”をいとおしみながら夜空を見上げ、短冊に「あの味をもう一度」と願いたい。