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2026/02/12
(木)
- 「大空は/梅のにほひに/かすみつつ/くもりもはてぬ/春の夜の月」▼立春を過ぎても寒い日が続いているが、人吉球磨は桃の節句に先駆けて「人吉球磨のひなまつり」が開幕。先月末には日本気象協会が桜(ソメイヨシノ)の開花予想の発表を開始するなど、春はゆっくり着実に近づいている▼冒頭は「新古今和歌集」に収録された藤原定家の和歌。この歌は大江千里の「照りもせず/曇りもはてぬ/春の夜の…」を本歌としているらしい。いずれの和歌も漆黒に月光がにじむ幻想的な春の夜を描写し、加えて定家は梅の香りを歌う。時代を超えて五感に響く春の音▼当時の宮廷文化を今に伝える一つが「ひなまつり」。人吉球磨にも各所に古今の色彩豊かなひな人形が飾られ始めた。十二単は防寒の意味もあったと聞くが、重ねた衣のグラデーションや調度品など、日常の中で季節や趣味を楽しむ光景を想像する▼5年前、豪雨被災地で民家の跡地に人知れず咲く梅を見つけた。家主はどんな思いを込めて植えたのだろう。時がたち、庭木や塀の撤去も進んで景色は変わる。「あるじなしとて/春な忘れそ」―。氷は解け、水ぬるむ中にも復興は半ばと改めて思う春。