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2025/04/01
(火)
- 「さくら花ぬしを忘れぬものならば吹き来む風に言伝てはせよ」―▼先月23日、全国トップで熊本県のサクラの開花が発表された。気付けば人吉球磨もサクラ舞う季節。ウメが遅れて名残雪もあった早春、草木はそれでも季節を忘れず花を咲かせる▼日曜日、サクラに誘われ近所を車で走った。間もなく豪雨災害から4年9カ月。変容する被災地に当たり前が当たり前でないことを痛感する一方、変わらず山肌を彩るヤマザクラ▼更地になった学校や公民館の跡地もサクラが満開に。一帯は洪水で浸水した地域。サクラの木もてっぺんまで濁流にのまれたと思うのだが、ことしも強く優しく命を咲かせた▼冒頭の和歌は「東風吹かば―」で知られる菅原道真が詠んだもの。あるじのいない庭や野山で人知れず命をつなぐ被災地の花への思いを重ねる▼昔はサクラと言えば新学期の花で、ぴかぴかのランドセルを守るように登校班が連なり、公民館では住民が花見を楽しんだ。今では菜の花が誇る農地も災害前は作物が実っていた▼サクラは早くも満開の様相だが、花冷えが手伝ってもう少しは楽しめそうか。風に舞う花びらに「疾く過ぎゆくな春の中の春」と名残を惜しむ。