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2024/09/17
(火)
- 相変わらず日差しは鋭いが朝晩は幾分涼しくなり、早まる日の入りに秋の気配を感じながら帰途に就いた先日、ふと声を掛けていただいた。「ほら、あそこ、宇宙ステーションが通っているよ」。その日、その時間に通り、教えてもらったからこそ見ることができた特別な景色▼夜空を見上げるのは久しぶりで、昔、都会出身の友人から「天の川は本当に川のように見えるのか」と尋ねられたことを思い出す。わが家から見える夜空は今もちゃんと星が瞬き、山際にはさそり座の大きなS字と高い空には月に虹色の環が見えた▼鈴虫らしい声を遠くに聴きながら、子どものころは空や自然が今より近くにあったように思う。今は車など、いつでもどこでも移動できるし夜も明かりの下でテレビや動画や本を見られる。自由度は上がった一方で、大人になり遠ざかった世界もあると実感▼知恵や文明と引き換えに人が失った自然の声を聴く力。好きな画家の世界観と重なる。今夜は中秋の名月。「月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど」。古人も眺めた夜空に宇宙ステーションがある時代。現代ならではの景色に千々に思いを巡らす秋の夜長。