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  • 2024/07/08 (月)
  •  「土に生きる」。川辺川ダム問題に翻ろうされながらも、五木村集落跡の水没予定地で最後の1世帯になっても残り続け、たくましく生きた農民の生活がそこにあった▼計画発表から58年が経過した川辺川ダム。建設されると水没する中心地の頭地集落から住民が安全な高台などに移転。住民はいなくなり、集落も更地となる中、それでも尾方茂さん、ちゆきさん夫妻は離れなかった▼最後まで移転しなかった理由は、先祖代々守ってきた土に根差す「土に生きる」を貫いたからという。田畑を耕す昔ながらの自給自足に近い暮らしが多くの共感を集めた▼しかし一軒だけ残る寂しさ、年齢を重ねることへの不安、強制収用への恐れなどダム問題に心が揺れ動かされたに違いない▼蒲島郁夫氏が県知事時代、川辺川ダムの白紙撤回を表明後、尾方さん夫妻はこの世を去り、先月には水没予定地に唯一残る住家が後を追うように解体された▼2人が亡くなった後、川辺川ダムに代わる流水型ダム計画が浮上。木下丈二村長は「ダム前提のむらづくり」にかじを切った▼ダム問題に二転三転する村の現状について、尾方さん夫妻はどう思うだろうかが頭をよぎる。

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