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  • 2021/09/11 (土)
  •  猛暑日どころか真夏日すら珍しくなり、朝晩の過ごしやすさが季節の変化を告げる。そして昼間は秋の蝉、いわゆる残蝉のヒグラシやツクツクボウシが活力を増す。そして夜は虫の音だ▼巷では梨に葡萄や柿、栗などの秋の味覚が並ぶ。災害復旧で季節感が皆無だった昨秋と比べて心の余裕は生まれただろうか。「源氏物語」夕霧巻七段の冒頭では虫の音や滝の音、鹿の鳴き声が入り交じって風情をそそるとある。複数の虫の音のハーモニー、耳を澄ませ味わってよい▼式部ついでに少納言の「枕草子」から。第一段の秋では夕刻の情景をたたえつつ「日入りはてて、風の音、虫の音など、はた、言ふべきにあらず」と、日没後の虫の音などを言い尽くせないとも評する▼巷、中でも中央政治世界では、やにわに特別な“音”が響き出した。それぞれが勝利の暁に見える首席の座を欲して政策を豪語するが、その能否の是非は問われない。揚げ句は組閣を見据えた見返りなど派閥を超えて挙党一致、ようやく調和が生まれる。そのハーモニーは来月以降の衆院選にも影響する▼月齢浅いきょう深夜、縁側にてしばし虫の音を堪能。よい音色だった。

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