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  • 2025/04/23 (水)
  •  今月に入り、本紙でお世話になった人たちの訃報が続く。昨日死去された乙益正隆さんもその一人▼元日特集号では、新年の十二支にまつわる草木話を執筆いただいていたが、生前の姿を思い出すと、地域の植物学者であり、生き字引そのもの▼若い時、ツクシイバラなどの植物研究で知られる前原勘次郎氏、シダ研究の倉田悟氏と出会い、教師の傍らシダ植物を調査研究。その魅力を「葉が幾何学模様できれい。調べると新しい分布、新種が出てくる」と語っていた▼地道な調査で15種類の新種を発見。採取した植物は14万点を超え、土手町の自宅は無数の標本であふれていた。その成果を後世に伝えるべく13年前にまとめた「熊本県シダ植物誌」は、図鑑のようにカラー写真を使い、標本と照会できる集大成ともいうべき内容▼また、学術面にとどまらず、各地域で呼ばれていた方言、生活での使われ方など民俗学面にも及び、元日特集号の草木話、熊本南部森林管理署主催の自然観察会とセミナーの講義で見識の広さが表れていた▼長年の研究は、多くの著書と標本として遺された。ご冥福とともに、埋もれることなく生かされることを願いたい。

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