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  • 2020/10/24 (土)
  •  日本に幾つもある伝統文化とその技術。さて伝統とは守り残すべきか、それとも簡便性を基軸に新たに取って代えてよいものか。まずは各自の思考と議論が不可欠▼製茶や鍛冶、木工に陶芸など郡市特産の伝統産業界では、作業負担や経済的な理由か担い手は減少の一途。それでもなお、継続と伝統の価値を重んじた職人らの手で、きょうもその技術が保持されている▼伝統技術といえば最近の話題が「印章」。菅総理のデジタル庁新設に沿った根回しか、河野行革相の「はんこ廃止」発言に省庁も機敏に反応するが、実は昨年6月の「未来投資戦略」による商業登記法改正案で、印影認証廃止への布石は置かれていた▼偽造への対応とIT時代における簡便性の追及、さらには2001年施行の電子署名法の完遂に押印は邪魔らしい。しかし印章は、その彫刻技能とともに文字の究極的体系としても優れた伝統文化である。数㍉~数㌢四方に豊富な書体で漢字や平仮名、片仮名を描く素晴らしさは特筆もの▼はんこ廃止論は、印章彫刻技能士の知人の苦悩を想像させる嫌な話題だが、世の流れであるのは確か。関係者の生活とはんこ文化保護への関心もまた不可欠なテーマだ。

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