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  • 2020/10/23 (金)
  •  あさぎり翔成館の少年剣士が東日本大震災を機に米を作り、福島、宮城、岩手各県の剣道連盟に売り上げ金を贈る活動は、ことしで10回を迎えた。節目として米作りを終え、今後違う形で支援や交流をと前を向く▼米作りの根底には「人の痛みが分かる子ども」の育成に力を入れる上杉謙一館長の思いがあった。人の痛みが分からずして分かるものはない―が信条。剣道を体得する前に人としてどうあるべきか、どうすべきかを問い続けている▼あいさつを重んじるのもそのため。礼に始まり、礼に終わる武道の世界で相手に敬意を示し試合に臨むのは勝ち負けより重要という。家族や友人らとの間でも節度を失えば不和のもとになる故、「親しき中にも礼儀あり」と教える▼世の中の移り変わりが激しい例えの十年一昔。過ぎ行く時の流れを早く感じるか、遅く感じるかは人それぞれだが、多くの命が犠牲となり、人々の暮らしが変貌した東日本大震災に関する話題が発災から10年を待たずして減った感は否めない▼時間の経過とともに薄れゆく記憶。起きたことは教訓としつつ、可能な限り被害が少なくなるよう努めるのは今を生きるわれわれの責務と改めて。

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