HOME>>瀬音

  • 2019/08/29 (木)
  •  秋の味覚が市場に並び始めた。郡市ではアユやナシ、ブドウもあるが、山の住人は海の幸が恋しくなる。サンマもそのひとつ▼秋で思い出す匂いがひとつ。空腹の胃をわしづかみにするサンマだ。約40年前、夕餉どきの部活動の帰路、霞ほどの風情はないが自転車上から望む自宅そばの山辺一帯に炊事の煙が漂い、落日の日色と相まって郷愁感ある光景が広がっていた▼わが国の食料自給率は先進国では最低ながら、年間の食品廃棄量は1940万㌧に達し世界第2位。国民一人当たりでは、もちろん第1位と不名誉な現状故に、たとえサンマが不漁で高騰、食卓に上らなくても文句は言えまい▼大根おろしが添えられた、焼き上げてすぐのサンマにスダチやカボスの柑橘汁をかければ「ジュッ」とうまそうな音が響く。好みの調味料で食らいつき、食が進む至福ぶりは誰もが経験済みの秋の風物詩▼縁あって毎年、脂ののった特大サンマが届く。恩人への配布は欠かさなかったが昨年はその量も激減。ここでも不漁の影響を実感する▼“秋魚”の「秋刀魚」。往時、各戸から漂っていたあの煙は、うまさの証しだった。すでに胃袋を満たす準備は万端。味覚の到着が待ち遠しい。

トップへもどる