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  • 2019/07/18 (木)
  •  山際に住んでいないから、梅雨期に最も警戒するのは球磨川の増水。先の大雨で「避難勧告」がスマホに入り、消防車の巡回広報と出合っても、経験を基につい危険度を自己判断してしまう。過信、油断が禁物なのは重々承知▼「堤防最上部まであと2㍍」などと球磨川の濁流を横目に、「これで川石が洗われ、餌の珪藻が育つ」と、知人は梅雨明け後のアユ豊漁を期待した。考えれば、郡市民がいま捕り、食べる川魚はアユやヤマメなど“高級魚”が大半。昔はハエ、イダ、フナなど“大衆魚”を食卓に乗せた▼だから、あのころの漁法は廃れた。数年前まで残っていた濁りすくいも、ことしは見なかった。増水で岸辺に寄った魚を、流れに沿って操る大網ですくうもので、危険と隣り合わせだが郡市民の楽しみだった▼魚のはらわたを餌に、濁流の中の大イダを狙うバクダン釣りも橋上に並んだ。投網はもちろん、川を泳ぎながらイザリ(鉾)でアユを突く名人もいた。ウナギてご、かし針、瓶づけも。大人も子どもも普通に魚を捕っていた▼豊富な食品による食生活の変容が、そんな郡市の風物詩を消したのだろう。どっちの時代が幸せか。週末は台風と雨交じりの予報。

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