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  • 2019/06/08 (土)
  •  「蛍二十日に蝉三日」。盛りの短さのたとえだが、ホタルのシーズンも終わりに向かうこのごろ。淡い光に触れると、どことなく寂しさが漂う▼個人的見解と前置きしつつ、日本人は儚さに美を感じると思う。春のサクラに初夏のホタル、盛夏の花火や秋の落ち葉など。あながち外れてはいまい。まさにこの世は諸行無常と生者必滅。現代社会に生きる人々はこれを忘れがち▼郡市のホタル鑑賞はまだ大丈夫だ。ちなみにホタルを楽しめる気象条件は、蒸し暑さを感じるほど湿度が高く、月明かりのない曇った日。日没後、午後7時ごろから9時すぎまでのピークが一般的。なお個体数の減少が著しく、その保護のためにも捕獲は遠慮すべきだ▼ホタルの儚さといえば以前の小欄でも触れたが、江戸期の本草儒学者の貝原益軒は「火垂る」といい、同じ江戸でも、益軒の1世紀後に活躍した本草学者、小野嵐山は「星垂る」と命名した。あの微光をもって語る両者の感性こそ、本草のなせる業▼核不拡散を声高に叫ぶ核保有国に、失政を棚上げし希望を語る政治家ら。不遜などの驕りは、いずれわが身に返ってくる。私たち人間の命もまた、儚く淡き光と同じ。

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